フランスのドアと空き巣

日常のこと

盗人に御用心

昨日の午後三時頃、いきなりドアがカチャンと鳴りました。聞き間違えかと思ったのですが、直後に、隣に座っていた彼もドアの方を確認し、私を見てきたので気のせいではなかったようです。…マルセイユ、怖っ!
確認しに行くと、ドアは開いていないものの、ロックは、一回しかされていませんでした。フランスでは、防犯上、家のロックは二重もしくは三重となっています。
その後、思い切って、ドアを開けて外を確認しましたが、誰かがいた気配はありませんでした。

 元々、ロックを数回していなかったのかもしれないし真相は分かりませんが、私は、一日経った今でも重い気分が続いています。というのは、第一に、フランスの空き巣被害は防ぎようがない事を分かっているからです。ドアなんぞ、下敷き一枚で開いてしまうし、盗まれたって、警察が相手を追う事なんて滅多にありません。更に、マルセイユは犯罪率が国内一、二を誇る街なので、
盗まれる覚悟で住むしかないのです。
(と、私自身は思っております。)

 日頃から、外出時のスリ対策はしています。バッグは、チャック付きでノーブランド物を体に密着させながら歩いているし、スマホは、極力触らないようにしています。煌びやかなアクセサリーは着けず、服装も普通の若者みたいな、リッチでもなく、地味すぎるわけでもない、特に悪目立ちしない感じを心がけているのです。ここまで気をつけているので、幸い、フランスでは、一度しか盗難に遭ったことはありません。(それは完璧油断していたので仕方ない…いえ、大いに反省しました。)だけれども、空き巣となれば防衛対策をどうしろというのでしょうか?
昨晩は眠れずに、過去の事例から対策を色々考えてみたけれど、結局「
無し」という結論に至りました。この考えは、日頃からロマやSDFの人々を見ていることが大きな理由です。
だって無いもの…、
ドアという概念が!
冷静に考えれば、
外からの敵を守っているのは、板一枚(=ドア)なのですよね。木なら強引に蹴り飛ばせば壊せるし、ガラスだって叩けば割れます。それなのに、鍵をかけたら安心と思えるのは、自分自身がそこまでして誰かのテリトリーに入ることをしないからでしょうか。

私は、ホテルで働いていたことがあります。その時、2度ほど、お客さまが滞在中の部屋の扉を開いてしまいました。
なんせ、従業員は、全部屋に入れる
マスターキーを使用できるので、出入りに制限がありませんから。つまり、いくら厳重に部屋の鍵を閉めたとしても「誰か」は必ず開けられるのです。

 これは、家の大家にも同じことが言えますよね。そういえば、リヨンの寮に入居した翌日に、wifi接続の為の業者さんが入ってきたこともありました。呼び鈴が無かったので、管理人から鍵を借りて堂々と入室してきたのでしょうが、おかしな話です。寝転んでいた時に入ってこられたのも驚いたけれど…、外出時に部屋に入られるも不愉快極まりないですよ。
 以前に住んでいた
シェアハウスでは、ルームメイトが私の就寝中(寝たふり)に入ってきました。ベランダの窓を閉めたか確認する為だと言っていましたが、プライベートな空間に足を入れられるのは、ショックと恐怖と怒りが混ざった感覚でした。一応、ノックもしていたし、私がいると分かったら、すぐに謝ってドアを閉めていたので悪気がないことは理解できたのですが

 フランスに住んでいる人達のセキュリティへの概念がいまいち謎です。以前のホームステイ先は、ヴァカンスに出かける為、アプリで募った青年に愛猫を託していました。彼は、その愛猫を世話する名目で、一週間、誰もいない他人の家に滞在できるし鍵も自由に使えるというのです。そいつが、極悪人で、愛猫ちゃんを人質に身代金を要求でもしてきたらどうするのよ!ってことは無いと思いますが、こっそり金目の物を盗むことは大いにあり得ますよね。また、シェアハウス時代の話に戻りますが、私は二年間、同じ家にシェアメイト二人と暮らしていました。一人は、部屋を貸している側なので、ずっと同じ人でしたが、もう一人は、私と同じように借りる側なので時が来れば出ていきます。それで、結局、計四人(国籍バラバラ)と一緒に住んだのですが、最後のシェアメイトは、いまいち何をしている人なのかよく分からなかったので、正直怖かったのです。それでも、貸す側は、次から次へとアプリで入居者を探すのです。最近は、コロナの影響から、ビデオ訪問(ビデオカメラで部屋の様子を見せる)を専らしているようで…
どこから、「この人は大丈夫だ!」と思えるのか、やっぱり、彼らの感覚は、未だに理解できないでいます。

宗教や文化、教育環境が大いに異なるフランスにいると、想像していない事が起きるので(いや、起こしてくる人がいる)、心身が疲弊します。今回のドアの件も、日本では、「戸締まりはしっかり!」が安全対策のゴールになりますが、物を盗む行為を目的にしている奴らからすれば、ただの第一関門に過ぎないわけです。また、「のび太のものは俺のもの」という精神を持っている人々がそこら中でカメラやお財布、スマホを狙っています。だから、自己防衛を怠ってジャイアンに泣かされようと、フランスのドラえもんは、「君が悪いよ。のび太君」と、慰めの言葉もひみつ道具もくれずに、ただ哀れな目でこちらを見てきます。

このように、フランスに滞在する際は、家の中でもホテルの中でも安全な場所はなく、貴重品は、目のつかない場所に隠しておく必要があるというわけです。

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