フランス人に愛されるカマルグ闘牛

南フランスの特産品

 フランス南部にあるカマルグ(アルル)では、『闘牛』の文化が古くから根付いています。今回は、競技&という二つの観点からカマルグの闘牛文化を紹介していきます。

アーサー
アーサー

カマルグは、南フランスにあるアルル市の一帯の名前の事だよ!

スペインの国技でもある『闘牛』

 では、まず『闘牛』について簡単に説明します。『闘牛』とは、牛と牛、または牛と闘牛士、牛と犬が戦う競技のことです。国技として扱うのはスペインで、巨体な牛と派手なコスチュームに身を包む闘牛士の闘いは、言わずもがな多くの人々を魅了してきました。ところで皆さんは、赤いマントに突進する牛のその先を想像したことはありますか?
 華やかな試合の見せ場が訪れる時、無残にも牛の息の根は終わりを迎えます。槍や剣で『牛を仕留める』これこそが、『闘牛』という競技なのです。この様な残虐性から批判の嵐が巻きおこり、カタルーニャ州(スペイン)では2011年の試合を最後に『闘牛』は禁止となりました。

写真はスペイン闘牛のイメージです。

こうした動きの中、形を変えて今も『闘牛』を行なっている街があります。それが、南フランスにあるカマルグです。

カマルグ式闘牛

では、早速『カマルグ式闘牛』の公式的なやり方について解説していきます。(※1)

試合について

現行のしきたりでは、カペラド(Capelade)と呼ばれる開会式から幕が上がります。闘牛士(raseteur)はアリーナに入場後、観客および審査委員(委員長1名と副審2名)への挨拶をします。続いて、トランペットの音と共に闘牛が会場に現れます。2度目のトランペットの吹く音で、闘牛士は真っ白の衣装になり、いよいよ戦いの幕開けです。15分間の間に、闘牛士は牛の頭に付いているいくつかの飾り(複:attributs)を奪いに行きます。その際には、クロシェ(crochet)と呼ばれる鉤爪を使います。飾りと鉤爪は以下のイラストを参照下さい。

コカード(Cocarde):約5〜9cmほどの赤いリボンで、闘牛の額の中心に付いています。
グラン (Gland):白の毛糸でできたポンポンで両角に引っ掛けられています。
フィセル(Ficelle):牛の角に何重にも巻きつけられた紐です。

参考文献:Plaquette de présentation by Office de Tourisme des Saintes-Maries de la Mer – Tourisme en Camargue

これらの飾りには懸賞金がかけられていて、奪った数が闘牛士達の報酬になるというわけです。その額は、スポンサーおよび観客達により、どんどんと競り上がり白熱した試合をさらに盛り上げます。闘い中には、トゥルヌー(Tourneur)と呼ばれる補佐役が牛を最適なポジションに誘導し闘牛士達をアシストしていきます。さて、このようにして行われるカマルグ式闘牛ですが実際はどの様なものなのか!?という事で、以下に試合のビデオを貼っていますのでご覧下さい。

実際の様子

歴史

 今日のカマルグ式闘牛は、元々、他の動物(ライオン、馬、熊など)や農家の従者が水牛と戯れる形で戦い合っていたのが始まりだと言われています。公式的には、1402年にアルルの闘技場で開催された試合が最も古いもので、当時のプロヴァンス伯に敬意を送ることが目的でした。そして、1890年頃には、カマルグ水牛が闘いに向いている品種であるという事が徐々に解ってきました。彼らの闘争心が絶大であることは、何よりも大きな特徴です。その後、19世紀の終わりに、ゲームの過激さに対する批判の声が殺到した為、現在の「飾りを奪う」という形式が導入されることとなりました。

カマルグの美術館(仏:Musée de la Camargue )にあった写真です。

事故

闘牛』は、見るからに危険なスポーツで、闘牛士達が体中に傷を負うことは珍しくありません。それどころか、見物人をも巻き込んだ事故が今から20年前の2000年に起きています。先ほど挙げたビデオを見ていただければ分かりますが、興奮した牛は柵を飛び越える事があります。ヴォヴェール(仏:Vauvert)というコミューンでのある試合中に、前足を柵にかけ、観客席まで飛び込んできた牛がいました。当然、観客たちは必死に逃げまわりましたが、残念ながら一人の男性が追い詰められ角で攻撃された挙句に持ち上げられ、最期は牛と共に競技場へ落下し亡くなられました。いくら柵で取り囲まれていると言っても、観覧する際にはこうした事故が起こりうることも想定しておくべきですね。(※2)

<追加事項 2020年9月4日更新>

 今月の3日にまた、何とも痛ましい事故が起きてしまいました。被害者は、23歳の闘牛士で試合中の出来事でした。その日、ヴァラブルグ(仏:Vallabregues)の小さな闘技場では、初心者や研修生向けに若い水牛を相手にした決闘が行われておりました。この闘牛士は、打撃を受けた後に持ち上げられて競技場内の壁に激しく打ち付けられたと言います。この強打が致命傷となり、その後運ばれた病院で家族に見守られながら息を引き取りました。闘牛に関する学校に通い、闘牛に対してものすごく情熱を持っていた青年だったと言います。(※3)

アーサー
アーサー

さて、続いてはカマルグの「食文化」に関する『闘牛』のお話です。

水牛料理『ガルディアン・ド・トロ』

カマルグは、南フランス・アルル市の一帯にあります。海や川に囲まれた土地柄、海の幸を使った料理がよく食べられていますが、煮込み料理においては、お肉もまた引けを取りません。例えば、牛肉を使った「ブローファド: Broufade」や「フリコデバーク:Fricot des barques」、ハーブが香る羊肉の「ガルディアンGardianne」が。そして、忘れてならない水牛を使った「ガルディアン・ド・トロ:Gardianne de taureau」があります。

二又したローヌ川と地中海に囲まれた土地

ガルディアン・ド・トロとは

カマルグの伝統的な料理で、水牛を使ったシチューのことです。カマルグの水牛は、放牧下にいるため自然に生えている草花を食べて育ちます。こうした環境で飼育することは、エコシステムを守ると同時に高品質で美味しいお肉を作り上げるのです。

ヴァン・ゴッホの絵画「夜のカフェテラス」のイメージになったカフェで食べた時の写真です。(※)

出来上がりまで4ステップ!

今回は、la-Viande.frさんのサイトを参考に、ガルディアン・ド・トロの基本的な作り方を紹介します。(※4)

1.赤ワインソースに細かく切った肉を一晩漬け込む。
2.肉をソースから取り出し、水気を拭ってからオリーブオイルで茶色くなるまで炒める。(強火)
3.肉に塩と薄力粉をまぶし、アンチョビを加え、肉を漬け込んだ赤ワインソースで45分程煮込む。
4.その後、黒オリーブを加え、弱火にしてコトコトと肉が柔らかくなるまで2時間30分程煮込んで完成。
カマルグ米を添えて食べるのが伝統的な食べ方です。

カマルグ水牛の品質保証AOC

チーズやワインでお馴染みの「AOC」は、品質を守るために作られ認証です。原料や製造過程などで厳しいチェックを受けて、見事認められた物だけが名乗れる「本物の証」というわけです。カマルグ水牛もまた、1992年に作られました。下の写真がマークです。

まとめ

いかがでしたか?今回は、「競技」と「食」という二方面から見たカマルグの『闘牛文化』についての紹介をいたしました。動物を思いやりながらも文化は守る、そして自分たちも楽む、味わうという姿勢にフランス人らしさを感じました。『闘牛』に関しては、カマルグ式でも悲観的な見方をする人もいると思いますが、個人的には、動物に対する尊敬や恐怖心を人々が抱く良い機会になるので今後も古き良き伝統文化として受け継いでいってほしいと思います。

参考資料&写真提供

参考資料:
(※1)Plaquette de présentation by Office de Tourisme des Saintes-Maries de la Mer – Tourisme en Camargue
(※2)manille par ouest france
(※3)La Provence
(※4)la-Viande.fr
写真提供:J.Corsi

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